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新規就農して法人化を遂げた白州杜苑が「有機無農薬米づくり」を志す

有機無農薬野菜の生産者が何故、紙マルチ田植機に惹かれるのか

変形型の圃場でも、きれいに紙マルチ田植えが可能だ。ほかに、中山間地の狭小圃場などでも紙マルチ田植機は活躍しているのだ。

 有機栽培は慣行栽培よりも難しい。化学農薬を使わないから雑草や病害虫の被害を受けやすく、きちんと世話をしなければ慣行栽培のような収量は期待できない。ところが有機無農薬の野菜一本で新規就農して、法人化に成功した農業生産者がいる。2015年から、明峰として名高い甲斐駒ヶ岳と八ヶ岳に挟まれた山梨県北杜市白州町で営農している白州杜苑(はくしゅうとえん)だ。代表取締役の中嶋勇一郎さんが教えてくれた。
「白州は有名なウイスキーの産地であることからお分かりのように、とにかく水が綺麗で豊富です。新規就農する際に白州を選んだ理由の一つが、この水にあります。また、この付近の標高は600m前後だから、夏でも朝晩は涼しい日も多い。この寒暖の差が、美味しい農作物を育ててくれるのです」

スタッフと熱心に説明を聞く中嶋さん。「野菜栽培に注力するためには、雑草対策を出来る限り省力化したい。『紙マルチ田植機』でそれができるのか、しっかり確かめたい」

 白州杜苑の圃場面積は4ha。3名のスタッフで約10種類の野菜を有機無農薬で栽培している。そんな野菜栽培を主業とする白州杜苑だが、5年前から米の有機栽培にも挑戦している。
「当社が営農している北杜市はオーガニックビレッジ宣言をしたのですが、それ以前から、地産地消や食育の観点から、市内の保育園や小中学校に特別栽培米を提供していました。当社は野菜中心ですが、同じ有機栽培生産者として協力しようと、米作りを始めたのです」(中嶋さん)
 オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫して、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取り組みを進める市町村のこと。三菱農業機械は今年5月、同じくオーガニックビレッジ宣言をした島根県大田市と、有機栽培米に関連した連携協定を結んでいる。

 北杜市には現在約70名の有機栽培生産者がいるが、自治体が推進する有機栽培米づくりに協力しているのは10数名。中嶋さんは今後も協力を続けて行きたいが、大きな悩みがあると、やや曇った表情で課題を明かしてくれた。それは有機栽培米生産者の誰もが必ず直面する「雑草対策」だ。
「ちょうど田植えの時期は主業の野菜の出荷作業など重複しており、人手と時間を野菜の方に取られてしまい、水田の除草作業との両立がとても大変なのです。市販の除草ロボットなども試しましたが、田んぼの均平が出ていないためか、上手く行きませんでした。そのため昨年までは、泣く泣く人手を割いて酷暑の中でも3日に一度チェーン除草をしていました」

田植と同時に敷き詰めた紙マルチが雑草の生育を抑制し、その間に苗はスクスクと成長する。紙が溶解した頃には稲は十分に生長しているから、雑草が生えてきたとしても背丈で勝る稲が日照権で勝り大きく育つ。

 そのタイミングで偶然にも、三菱農業機械の『紙マルチ田植機』のモニターキャンペーンと出会い、今回初めて試すことになった。紙マルチ田植機とは、田植えと同時に田面に専用の紙マルチ(再生紙)を敷き詰めることで田面への日光の通過を遮断して雑草の生長を抑制する、無農薬栽培に貢献するために開発された三菱農業機械独自の田植機である。「みどりの食料システム法」の投資促進税制の対象に認定された名機だ。初挑戦した感想をうかがうと、満面の笑みで答えてくれた。

白州杜苑代表取締役の中嶋勇一郎さんは東京でアパレル会社に勤務した後、北杜市白州町で新規就農した。野菜の有機栽培を主業としつつ、地域貢献の一環として有機米にも取り組んでいる。

「しびれましたね!緊張しましたが、思いのほか上手く紙を敷くことができて、感動してしまいました(笑)紙マルチ田植機のおかげで田植から2カ月弱、初夏の茹だるような暑さのなかで除草作業をする必要がないと考えると、空いた時間と人員を出荷のピークを迎える野菜作業の方へ回すことができますね。
 ただ、田植機は高価ですから、自分一人で買うとは…即断できません。それでも、ここ北杜市はオーガニックビレッジ。自治体や地域の仲間と相談して、共同で購入できないか探ってみます」と、真剣に購入を検討している様子だった。近い将来、このオーガニックビレッジの水田を、「紙マルチ田植機」が走り回わり、初夏の田園風景に変化が訪れているかも知れない。

文・川島 礼二郎

【取材協力】白州杜苑

https://www.hakushu-toen.farm/

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環境保全、有機米づくりを強力にバックアップ

無農薬栽培に貢献するため開発された三菱農業機械独自の田植機。発売が開始された1997年以来、日本の安心・安全な米作りを支え続ける名機だ。
田植えと同時に田面に専用の再生紙を敷き詰めることで雑草を抑制する。農薬を極力使わない=安心安全な米作りをサポートする「みどりの食料システム法」の投資促進税制の対象となる田植機である。

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