刈取までの管理作業
幻と言われた「強力米」を現代の農法で農薬や化学肥料を使わずに育てる。その作業は一つ一つがまさに実験であり、最適なレシピを探求していく未来に繋がる挑戦です。ここでは 5/28 に学生の皆さんと行った田植え以降に行われた管理作業のレポートをお送りします。
田植え後はすぐに田んぼに水を入れて管理をします。しっかりと水を張って管理することで、根付きと分けつを促し、再生紙を水で押さえて飛ばないようにします。稲の育成には水の管理が欠かせません。
田植えから1ヶ月たった頃を目安に、1 ~ 2週間田んぼに水を入れずに乾かします。収穫するときに目標とする一株当たりの本数は25~26本なので、目標の8割程度の本数になっていることを確認して中干しを始めます。この中干しを行うことで無駄な分けつ(茎が増えること)を抑えて有効茎(穂になる茎)をしっかりと残 すことができます。そのまま水をためておくと分けつが進み、茎が細く弱々しい穂が出てきやすいので、中干しすることによって分けつを抑え、ムダな茎も枯らし、根に酸素を入れて有効茎をしっかり確保します。中干 しの期間中には溝切の作業なども行います。
水はけをよくして田んぼを乾かしやすくします。乾きやすいのでコンバインで刈取するときに直前の雨があっても対応しやすくなります。
しっかりと中干しができたら、再び湛水管理を行います。最初は走水といって水を入れるのですが、すぐに全部抜いてしまいます。一気に水をやると根腐れを起こすこともあるので、走水を入れてすぐ抜いて、次の日また入れて、抜いてという作業を行います。2回走水をしてから、中干し前の湛水管理に戻します。
畦に雑草が生えていると雑草の種が田んぼに落ちたり、根が伸びたりして田んぼの中まで雑草が生えてくるので、大きくなる前に除草作業を行います。今回の強力のように農薬も使用しない場合は、特に病気もつきやすい ので、それを防ぐために除草して風通しをよくすることが重要です。また、カメムシの被害を抑えるためにも除草は重要な作業です。稲に穂が出るとカメムシが寄ってきます。基本的に雑草の方が稲より早く穂が出るので、始めに雑草にカメムシがつきますが、雑草についているとそのまま稲に移りやすくなります。そのため、本来はずっと雑草がないのが理想ですが、特に出穂期には雑草を短くしておく必要があります。
その他にも...
田んぼの周りに生息するイタチ、もぐら、カエル、かに、カメなど色々な動物が、畦に穴をあけてしまうこともあります。畦に穴が開くと水が抜けていってしまうので、気づいたタイミングで穴を埋めてやります。このように田植えから刈取りまでの時期は田んぼや水路の水を見たり、除草作業を行ったり、稲の葉の生育状況の確認など、細かな作業も沢山あります。
再生紙マルチシートを使うか使わないかで雑草の生え方は全く違います。(右の2枚の写真は植付から43日後の比較)
無農薬でお米を作る上で一番大変なことは除草作業。雑草は土に日が当たることで育つので、稲が伸びる1ヶ月半で土が稲の影に入ってしまえば雑草の生育を抑えることができます。今回行う紙マルチ農法は稲が伸びるまでの時期を紙で田んぼを覆うことで農薬を使わずに除草の手間を大幅に軽減するといった方法で強力を育成しています。
雑草には沢山の種類が存在しますが、よく見るものをいくつかご紹介します。中でも厄介なのがキシュウスズメノヒエ、芝のような見た目で根が張って増えていきます。草刈機で飛ばすと刈った草からも増えてしまうため手で根っこごとと取ります。
近くの圃場でも学生さんが研究のための作業を行っていました。大学には今回の企画に使っている他にも多くのほ場があり ます。6ブロックに肥料パターンを分けたほ場で、2週間おきに草丈や葉の枚数、葉色などを測定。1週間おきに定点写真も撮影しているそうです。窒素量を変化させ倒れない大きさで、最も多く収穫できる生育方法を研究中。この日はデータ採集の一環で草丈と葉の枚数の測定を丸一日かけて調査していました。
鳥取大学農学部附属フィールドサイエンスセンター
技術職員 佐藤 健 さん
SPECIAL INTERVIEW
(有)山根酒造場 代表取締役社長
山根正紀さん