もち米栽培の効率化を支える
ラバータイプディスクハロー

“儲かる水稲農家”であり続ける!
宮城県岩沼市の農業生産者をたずねて

野菜のキセキ 野菜のキセキ

やり方を考えれば水稲農家も儲かる!
被災地から儲かる農業を提案したい

米価が下がっても利益を生み出す

『ラバータイプディスクハロー』は、2列の花形大径ディスク+トゥースローラーで構成される。構造がシンプルなので剛性が高く、ディスクの耐久性も高くロータリに比べてランニングコストが安いことも経費削減に一役買っている。

2021年産米も価格が下落するという話が聞こえて来る。本年6月末時点の民間在庫は173万tであり、2年連続して約20万tずつの増加だ。コロナ禍の影響が直撃したこともあり、米余り傾向に歯止めが掛からない。米が余れば価格は下落する。大規模化して効率化を図ろうにも、人手不足という現実が立ちはだかる。生産コストを低減しようにも限界がある。米農家にとって、現実は八方塞がりのように見える。ところが、そんな逆風をどこ吹く風と、ここ数年連続して最高益を叩き出している米農家が、宮城県岩沼市にいる。
 
岩沼市は、東北地方最大の都市・仙台市の南20㎞に位置している。西部は山岳地域だが、そこから太平洋に面する東部にかけては平野が広がる。市の南部には、福島県の旭岳を源流とする一級河川・阿武隈川が仙台湾に注いでいる。広大な平地と豊富な水源を誇る岩沼市は、典型的な米所である。
 
岩沼市は東日本大震災の被災地だ。多くの農業生産者は、津波により農地が水没したり、農業機械が流された。被災の影響もあり、岩沼市の農業生産者数は、震災前の2010年から2015年までの間に、908から490へと、ほぼ半減してしまった。今回は、そんな岩沼市を本拠地にする農事組合法人「野菜のキセキ」を訪ねた。

米農家は儲からない、は思い違い
儲かる方法を考え見つければ良い

お話をうかがったのは代表の村上和之さん。いきなり過激な内容から話が始まった。
「米農家は儲からない、っていうのは思い違いですよ。儲かる方法を考え見つければ良いのです。ウチは私が経営を引き継いで以降、ほとんど毎年、過去最高益を更新しています。転用作物はほぼ手を出しておらず、米だけです」と胸を張る。
 

和之さんが育てているのは、『みやこがねもち』と『ヒメノモチ』。高品質なもち米へのニーズは高く、一般流通米よりも高値で取引がされているのだとか。

和之さんが『野菜のキセキ』を創業したのは震災後、2013年のこと。津波により農業機械はすべて流されたが、幸いにも農地は無事だった。お父さんの武志さんの代で、分かっている範囲で11代続く農家を引き継いだ。現在は、約50haの農地を、和之さんと武志さん、それに従業員など4名で管理している。
 
注目すべきは、栽培する米の銘柄だ。和之さんが栽培している作物はもち米の『みやこがねもち』と『ヒメノモチ』を約30ha、主食用米の『ひとめぼれ』が約10ha、大豆が約10ha。もち米の割合が突出して高い。和之さんは続ける。
 
「ウチの米は、有名メーカーのお餅や、コンビニ等でも人気のアイスクリームを包むお餅の原料に使われています。震災前、父の代にはブランド米や特栽をやっていましたが、それらは震災で立ち行かなくなりました。風評被害というやつです。良い米や、こだわりの米が高く売れる、という図式が成立しなくなったのです。
 
そこで私の代からは、もち米に注力したのです。高品質のもち米には、当時から確かな需要がありました。メーカー(米問屋)は、高品質のもち米を安定的に必要量確保したい。私には、それを可能にする栽培技術がある。だから問屋さんが快く価格交渉に応じてくれました。
 
彼らも鬼ではないので(笑)、農家を潰そうとは思っていません。ビジネスとして対等に取引に応じてくれます。彼らを納得させる品質のもち米を十分な量供給できるなら、こちらにもしっかりと利益がある価格で買い取ってくれる。米農家は儲からない、ではなく方法を知らないだけ、探せば良いのです」
 
また、和之さんは効率的に栽培を行うため、無代掻き栽培を採用している。代掻きをすると、水はけが悪くなってしまい、収穫前に倒れたときに収穫できず、収穫適期を逃してしまう。そこで、プラウで起こしてレーザーレベラーで転圧し、バーチカルハローで耕して田植え、という手順を編み出した。一方で、多収を目指して、肥料は倒れる寸前まで多肥にし、収量を最大限まで高める工夫をしている。特に『みやこがねもち』は作り難い品種で、倒伏しやすいそうだ。
 

作業全体の効率化を実現する
新しい作業機を導入

そんな和之さんが新しい作業機を導入した。三菱農業機械が2020年に輸入販売を開始した、ヒサルラー社の『ラバータイプディスクハロー』だ。耕起作業をスピーディかつ省燃費で行うことができる。5月に届いたので今作には間に合わなかったが、秋から本格稼働させるという。取材当日は、従業員を通年雇用するために始めた、というネギを植える前の耕起を行っていた。
 
「もち米の田んぼで使う場合、収穫を終えたら、秋のうちに『ラバータイプディスクハロー』を入れる。冬の間に一度スタブルで起こしておいて、2月か3月に肥料を散布してから、もう一度『ラバータイプディスクハロー』を入れます。バーチカルを使う必要がなくなりますから、作業が圧倒的に効率化できると思います。
 
今のところ、試しにネギのほ場で使っていますが、作業速度が圧倒的に速い!これまで行っていたロータリでの作業は3㎞/h程でしたが、『ラバータイプディスクハロー』は最高15㎞/h。あまり速度を出し過ぎると、ほ場によっては土を一緒に引きずってしまうので、実際は10㎞/h程度で運用していますが、それでも作業速度は3倍以上です。
 
今秋以降の水田での作業では、一日に10ha作業する予定ですが、『ラバータイプディスクハロー』なら一枚40分も掛からないはず。圧倒的な効率化を実現してくれそうです。作業機の駆動にPTOを介さない構造だから燃費も良好だと聞いていますが、そもそも作業時間=稼働時間が短くなりますから、間違いなく燃料費を節約できるはずです。
 
ウチが取り組んでいる無代掻き栽培というのは、考えようによっては、田んぼで畑作をやっているようなものです。ここは田んぼ一枚もウンと広いですから、北海道の農業に近い感覚なのかも知れませんね。一気にダーッと作業を終わらせることができれば効率的ですから、農機本体や作業機を導入する際には、他所の方とは比較にならないくらい、真剣に吟味しています。
 
昨年頃から耕起を効率化するためにディスクハローを探していたのですが、他社製品はちょっと手を出し難い価格でした。その点、ヒサルラー製品は手頃。減価償却までビシッと計算して、これなら利益が出せると分かっていました。

耕起作業時間を大幅短縮
空いた時間で次を計画する

耕起作業を効率化することで、和之さんは何をしようとしているのだろうか。
「一つは、自分と従業員のための時間を作ります。今の体制ならば、もち米を極めることで、当面は安定的に経営を継続することができます。私は規模拡大=利益拡大は実現しにくいと考えていますので、大規模化は目指しません。それよりも良いビジネスモデルを作って、従業員にしっかりとした給料を払って、みんなが生活と時間に少しでもゆとりが持てるような体制づくりにこの『ラバータイプディスクハロー』を活かしたいと考えています。

村上家は岩沼市で11代以上続く農家。和之さんは「無理に息子に継がせる気はありませんが、儲かる農業の礎を築いて、次世代へ繋いでいきたい」と語る。

また近い将来、新たに飲食業や畜産に関連したビジネスにチャレンジする計画を立てています。そうした、次を見据えたプランを計画や実行するためにも、時間的なゆとりが必要なのです。
 
もう一つは、すぐに実現するものではありませんが、良いビジネスモデルの土台作りです。私にはまだ幼い息子がいます。無理して後を継がせる気はありませんが、儲かる仕組みを作っておきたいのです。
 
ここ岩沼の農業は、残念ながら、あまり明るい希望があるとは思えません。将来的に米の値段が上がることはないでしょうし、そうであれば土地を広げても利益が増える見込みはありません。すると、補助金を頼って飼料用米に行きやすい。そんな経営に明るい未来があるのでしょうか。
 
私は、他人が作りたがらない、作るのが難しい、もち米に賭けました。それを、良い機械を導入することで効率的に栽培する。そして一般流通米よりも高く買ってくださる販路を築きました。被災地の米農家だって、やればできるのです。それを地元をはじめ、多くの方々に知っていただくためにも、新しいことにどんどん挑戦して行きます」
 
次の世代に岩沼の農業を引き継ぐために挑戦を続ける和之さんの、稲穂が実り黄金色に輝く田んぼで、今秋から『ラバータイプディスクハロー』が動き始める。これからも「被災地の米農家だって儲かる」ことを証明し続けてくれるはずだ。

  • 生産する有機JAS取得済の飼料が『生牧草』。40年掛けて編み出した独自の農法により無農薬・無化学肥料で生産される、安心・安全な飼料だ。鮮度の高い牧草をいち早くお届けする為、千葉だけでなく、北海道、九州にも圃場を保有する。
  • 中央牧草センターが使用するヒサルラー社製『ラバータイプディスクハロー』。耕起作業を圧倒的な速度で、かつPTOを使用しないので燃料費を抑え低コストで行うことができる。

『野菜のキセキ』のほ場がある岩沼市は早くから区画整理を続けていたが、震災後にそれが加速した結果、「一区画が1haでも普通」という大区画化が実現した。その景色は壮観の一言だ。

ラバータイプディスクハロー 高速で大地を駆ける

畑だけではなく、水田の耕起作業にも使えるディスクハローが上陸。
浅耕、播種床の準備、除草、肥料・堆肥の混和、表層の固い土を破砕、作物残渣・緑肥のすき込みを一度に高速で行え、作業効率の向上に大きく貢献します。従来に比べ、短時間で広い面積を耕起できるので、規模拡大のサポートや人手不足の問題解決にも一役買います。また、PTOを使用しないので、大幅に燃料を節約でき、コスト低減につながります。

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