三菱マヒンドラ農機は2023年度に全国規模でペースト一発施肥の実証テストを行い、北は青森から南は鹿児島まで、全国各地でペースト一発肥料の有効性を確認した。その結果、実証圃場の収量は各県収量の平均値より約5%程度高く、全ての地点で食味が“良好”となった。
今回、実証テストを行った中でも特に食味値が高く、全国トップの“極上”評価のお米を生産した富山県立山町の酒井さんをお伺いし、ペーストを利用した米作りについてお話を伺った。今回訪れたのは日本有数の豪雪地帯である立山連峰や黒部ダムなどで有名な富山県中新川郡で代々米の生産を行っている酒井孝さん。北アルプスの雪解け水がもたらす恵まれた清水を活かして、2024年現在自身の水田2haと営農組合の水田40haで地域の仲間7人とともにコシヒカリの栽培を行っている。
酒井さんは、20年以上ペースト施肥仕様の田植機を使用している熟練のユーザーだ。今までは、側条施肥を利用していたが、昨年は生育実証のために初めて二段施肥を使ったペースト一発肥料栽培体系での栽培に取り組んでいただいた。
酒井さん自身、他のお米と比較したことはないものの、遠方の親戚やお孫さんからは「おにぎりはちょっとの塩だけがいい」、「味が全然違う」と言われるそうだ。ただ意外にも、今回の訪問で酒井さんに食味値が“極上”で全国トップであったことを伝えると、とても驚いた様子だった。味がいいという自負はあった。しかし、それが数値的に「最上級のおいしさ」と証明されるとは思いもよらないことだった。のだと。ご自身は、いつも食べているので当たり前の味だと思っていた。
今は直売はされていないとのこと。今回の結果を受けてブランド化の考え伺うと「なかなかそこまでは手が回らないですね。いまは持っている農地を管理することで手いっぱい」とのこと。取材に同行してくれた三菱農機販売 富山営業所の山口さんは、「ペースト肥料が“おいしい米”作りに貢献しているのは間違いないと思います。ただ、せっかくの“極上”の食味の価値をアピールしきれていない。従来のルートに出荷するように手軽に販売できる販路などがあれば、農家の収入も良くなるし、ペースト施肥仕様の田植機の評価もより高くなるのではないでしょうか」と訴える。
今回の生育実証で試した二段施肥を使ったペースト一発肥料栽培体系については、「施肥量過多の不安があったため、施肥量を少なめで設定しました。ただ、実際に育ててみると肥料過多にもならず、追肥も必要ありませんでしたから、結果的には狙い通りに非常に省力化が図れてよかったです」とのこと。ペースト一発施肥の効果に十分満足いただけたようだ。
さらに、酒井さんからは作業面でのペースト施肥仕様の田植機のメリットとして、「雨でも予定通り作業できること」をお気に入りポイントとして挙げていただいた。「ペースト施肥仕様の田植機だと、雨天でも問題なく作業できます。まわりでは、他にペースト施肥仕様の田植機を使っている農家がいないので、雨が降っているときでも自分ひとりだけスケジュール通りに田植えが出来るときは、ペースト施肥仕様の田植機のメリットを感じます」とのこと。ただ、田植えを手伝ってもらう息子さんたちには、雨でも作業できるため逆に不評だった(笑)とのこと。
また、粒状肥料に使われるマイクロプラスチックに対する認識について伺うと「他所の水路や田んぼの淵には大量のマイクロプラスチックが付着していて驚きますが、うちの田んぼには全くない。地域環境保全には貢献していると思う」と自信を持ってお答えいただいた。今回の生育実証を踏まえ、酒井さんの田んぼでは、今年全て一発施肥体系での田植えに切り替えるという。
環境に優しく、さらに美味しいお米を、今年の秋も楽しみに待っている人がいる。酒井さんはこの夏も、喜んで食べてくれる親戚や孫たちを思い浮かべながら、田んぼに向かう。
ペースト肥料を上・下層の二段に分けて施肥することで肥効持続期間を延長させる技術が『ペースト二段施肥』。上根だけでなく下根へも直接施肥できるため下層の根を有効に生育させ、収量にプラスの影響を与える。
マイクロプラスチックとは、直径5mm以下のプラスチックのこと。一発肥料やBB肥料の被膜殻が水田外に流れ出し、マイクロプラスチックと化している。水稲生産者なら誰しも、この写真のような光景を目にしたことがあるはずだ。
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