営農情報

ミウラファーム津軽が見据える「これからの米作り」

耕作面積100haのメガファーマーは何故、紙マルチ田植機に挑戦するのか?

代表取締役社長の三浦裕行さん(中)、長男 正裕さん(左)、次男 琉星さん(右)。徹底した効率化により100haを越える圃場を守りつつ、さらなる食味へのこだわりと、有機無農薬栽培米に挑戦して行く。

 離農者数の増大とともに、限られた農業生産者への農地集積が進んだ結果、圃場面積100haを超える大規模稲作経営体が全国各地で増えている。100ha越えともなると、どの農業生産者も効率化に余念がない。大型機械の導入はもちろんのこと、ウェブサービスを活用した栽培管理や労務管理を行っている。青森県随一の米所である津軽地方・弘前市のミウラファーム津軽も、そんな100ha超の圃場を抱えるメガファーマーだ。
 そんなミウラファーム津軽が今年、大規模化とは異なる新たな挑戦を始める。それが紙マルチ田植機による有機無農薬栽培米だ。安心・安全な美味しいお米を求める消費者のニーズは国内外問わずさらに高まりをみせている。
代表取締役社長の三浦裕行さんに話をお聞きした。

田植と同時に敷き詰めた紙マルチが雑草の生育を抑制して、その間に苗はスクスクと成長する。「雑草対策は紙マルチ田植機にお任せして、今まで除草作業に費やしていた時間でこだわりの無農薬野菜作りに取り組みたいです」(琉星さん)

「私が社長に就任して以降、急激に規模を拡大してきました。ただ、規模拡大は目的ではなく、当地では凄い勢いで農家が減っていて、私の他に担い手がいなかった。農地を次世代に引き継ぐには、私が引き受けるしかありませんでした。その結果、今では自社農地だけで100haを越えており、作業受託が50haあります。枚数で言えば400筆以上の水田を、長男と次男、スタッフ5名で管理しています。
 規模拡大に対応するため効率化を進めてはいますが、これで万全なのかというと、不安があるのも事実です。『みどりの食料システム戦略』が認知されてきましたし、消費者の安心・安全なお米へのニーズはより高まっています。これまでとは違った方向に、一歩踏み出す必要性を感じていました。そんなタイミングで、次男が『紙マルチ田植機で有機無農薬栽培米に挑戦したい』と言ってくれたのです」

 紙マルチ田植機とは、田植えと同時に田面に専用の再生紙を敷き詰めることで田面への日光の通過を遮断して雑草の生長を抑制する、無農薬栽培に貢献するために開発された三菱農業機械独自の田植機である。「みどりの食料システム法」の投資促進税制の対象に認定された名機だ。紙マルチ田植機で有機無農薬栽培米に挑戦する次男の琉星さんが、挑戦を決意した理由を教えてくれた。

「高品質な米作りにも、並々ならぬこだわりがあります。自社ネットショップや産直ECサイトなどマルチチャンネルで販売していますが、『青天の霹靂』と『はれわたり』は特に人気です」(正裕さん)

「父から、『何度か無農薬栽培に挑戦したが上手く行かなかった』と聞かされていました。雑草対策に手が回らなかったのが原因だったそうです。父のもとで就農して5年たった今、父への恩返しとして、父が出来なかった有機無農薬栽培に挑戦しようと考えました。
 昨年は乗用タイプの除草機を試してみたのですが、苗に傷を付けたり踏んでしまったり、なかなか上手く行きませんでした。そんな時に三菱マヒンドラ農機さんより紙マルチ田植機で有機米栽培に挑戦してみませんか?というオファーをいただきました。今年は紙マルチ田植機の力を試して、雑草対策にどれだけ効果があるのか、効率化しつつも収量も上げて美味しい安心・安全なお米を作りたいです。

 将来は、紙マルチ田植機で栽培した有機無農薬米を核にしつつ、同じく無農薬で栽培している野菜を提供する、オーガニックカフェをオープンしたいです」と、目標を語ってくれた。
 裕行さんが病に倒れた際、大学を中退して就農して一家のピンチを救ったのは長男の正裕さんだ。「拡大し続ける自社農地を守り抜くための効率化に加えて、こだわってきた食味をさらに追求すべく、食味コンクールにも挑戦したい」と、正裕さんも意欲的だ。
 地域農業を次世代へ引き継ぎ、さらに進化させるべく規模拡大を続ける津軽のメガファーマー、ミウラファーム津軽の新たな挑戦を、三菱農業機械の紙マルチ田植機が共に支えて行く。

文・川島 礼二郎

【取材協力】 株式会社ミウラファーム津軽

https://miurafarm-tsugaru.com/sys/company/

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無農薬栽培に貢献するため開発された三菱農業機械独自の田植機。発売が開始された1997年以来、日本の安心・安全な米作りを支え続ける名機だ。
田植えと同時に田面に専用の再生紙を敷き詰めることで雑草を抑制する。農薬を極力使わない=安心安全な米作りをサポートする「みどりの食料システム法」の投資促進税制の対象となる田植機である。

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