営農情報

ペースト施肥で食味も良質に。

事例紹介:「ペースト施肥仕様田植機」で自慢の美味しいお米を作る

追肥不要だからペースト2段施肥は手軽!
有機入り肥料を使えば美味しいお米ができる

「ディーゼルエンジンの『ペースト施肥仕様田植機』は頑丈でパワフルだし速いから気に入っているよ。ペースト2段施肥だと苗の活着と初期成育が良いし、夏の暑さに負けないんだよ」と清一さんが教えてくれた。

 農業由来のマイクロプラスチックが、農用従事者だけでなく一般の方々にも認知され社会問題として認識されるようになった。様々な調査・研究から、水田で利用されている被覆肥料の被膜殻が、水田の用水路から河川や海岸などに漂着するマイクロプラスチックと化していることが分かってきた。被覆肥料とは、水溶性粒状肥料をプラスチック樹脂等で被覆した肥料のこと。作物の生育に合わせて肥効特性を制御できるため作業の省力化に有効ではあるが、SDGs(持続可能な成長目標)という指針が世界的に認知された今、このままにして良いはずがない。
 被覆肥料を使うことなく省力的な栽培ができる田植機は、実は既に市販されている。三菱農業機械の『ペースト施肥仕様田植機』がそれだ。1970年代後半にペースト肥料を片倉コープアグリが、ペースト施肥機を三菱農業機械が開発して発売した。元々『ペースト施肥仕様田植機』は琵琶湖の水質汚染対策として、水田外への肥料流出を防ぐために開発されたが、現在はマイクロプラスチックの水田外流出防止に役立つとして、再び注目されている。

ペースト肥料とは、尿素、燐安、塩化カリを主原料とするペースト状(粘性のある液状)肥料のこと。マイクロプラスチックを発生させないだけでなく、苗の活着と初期生育が良好というメリットがある。

 そんな『ペースト施肥仕様田植機』を長年使い続けているのが、福岡県みやま市の小宮清一さん・由紀さんご夫妻。由紀さんの家系である小宮家は当地で長らく農業を続けてきた。清一さんは定年退職するまでは会社員をしながら1町の田んぼを、由紀さんはそれに加えて1反のイチゴ栽培を続けて来た。由紀さんが『ペースト施肥仕様田植機』導入の経緯を教えてくれた。
「30年ほど前に、農機屋を営んでいた叔父に勧められて買ったのが『ペースト施肥仕様田植機』でした。今使っているのは5年前に買い替えた2代目です。ペースト2段施肥にすれば、一発肥料と同じように追肥は不要ですし、あの嫌な小さなプラスチックゴミが出ません。

小宮清一さん・由紀さんご夫妻。「マイクロプラスチックを出さないだけでなく、美味しいお米作りを手軽にできるのが『ペースト施肥仕様田植機』の魅力です」と笑顔で語ってくれた。

 そして何より、食味が全然違うんですよ。去年、猛暑の影響からこの地域では2等米になる方が増えてしまいましたが、私を含めて『ペースト施肥仕様田植機』の生産者は例年通り1等米でした。他所のお米を食べると、あぁ我が家のお米はペースト2段+有機だから美味しいんだと、つくづく実感します。
 この美味しいお米をネットなどで直販することができれば良いのかも知れませんが、もう私達は若くありませんから…。次の世代の方が挑戦してくれたら嬉しいですね」と、省力効果と、食味の良さに満足していた。取材に同行してくれた三菱農機販売福岡南部営業所の中村さんが補足して教えてくれた。
「この地域は小宮さんの叔父さんの尽力もあって『ペースト施肥仕様田植機』が普及しています。一度使ってさえいただければ、ペースト2段施肥は追肥が不要だから手軽である、というメリットをご理解いただけます。下段の肥料がちょうど良いタイミングで効いてくるから生育と食味が良くなるのも『ペースト施肥仕様田植機』のメリットです。小宮さんは有機入りペースト肥料をお使いですから、美味しいというのも納得です。
 それと今日は生憎、雨が降っていますが、ペースト施肥仕様田植機なら雨天でも問題なく作業できます。かつての小宮さんのように兼業農家の方はもちろんですが、ピンポイントでスケジュール通りに田植をしたい、という大規模生産者の方にもおススメできますよ」

地域有数の米問屋がペースト施肥仕様田植機を買って生産者になる

『みやま米』は銀座・京都・博多などの料亭でも愛用されている。特に、丁寧に土作りしたうえで『ペースト施肥仕様田植機』で田植した米は食味が良いのだとか。

 『ペースト施肥仕様田植機』が普及しているみやま市でお米問屋『松尾米穀店』を営んでいる松尾清さんは、地域農業の担い手になろうとしている。新車の『ペースト施肥仕様田植機』を購入して、来年から生産者としてもお米に関わって行く。
「ここ『みやま』は、知る人ぞ知る美味しいお米の産地なんですよ。私は職業柄、特に美味しいお米を作る『みやま』の生産者さんを知っています。そのお米は、米・食味分析鑑定コンクール国際大会で金賞を何度も受賞していますし、銀座や京都、博多などの料亭でもご愛用いただいているほどです」
 そんな松尾さんが『ペースト施肥仕様田植機』を購入した。問屋さんが何故、生産者になろうとしているのだろうか?
「理由の一つは、生産者の高齢化が進んでいるからです。80歳なんて普通で、90歳を越えている方が少なくありません。もちろん後継者はいません……このままでは、せっかくの米所が消失してしまう危機にあります。

松尾さんが購入した新車の『ペースト施肥仕様田植機』。「担い手不足が深刻ですから、自分がそこを引き受ける。そのうえで、しっかりと利益を出して行きたいですね。化成肥料価格は上昇傾向が続いており、ペースト肥料との価格差がなくなっていますから、『ペースト施肥仕様田植機』の導入は今ですよ」

 もう一つの理由は勝算があるからです(笑)。特にペースト2段施肥で丁寧に作った『みやま米』は、全国的にも高いレベルにあります。投資と経費、売上をバランスさせれば、生産のために雇用を増やしても必ず利益を出せると踏んでいます。来年6町から始めて、様子を見ながらですが5年度には100町へ、そして10年後には1,000町を目指します。」と力強く語ってくれた。
 マイクロプラスチックを出さない三菱農業機械の『ペースト施肥仕様田植機』は、これからも『みやま』の美味しいお米生産を陰から支えて行く。

文・川島 礼二郎

ペースト肥料を上・下層の二段に分けて施肥することで肥効持続期間を延長させる技術が『ペースト二段施肥』。上根だけでなく下根へも直接施肥できるため下層の根を有効に生育させ、収量にプラスの影響を与える。

マイクロプラスチックとは、直径5mm以下のプラスチックのこと。一発肥料やBB肥料の被膜殻が水田外に流れ出し、マイクロプラスチックと化している。水稲生産者なら誰しも、この写真のような光景を目にしたことがあるはずだ。

【取材協力】
松尾米穀店

https://matsukome.com/

三菱農機販売 福岡南部営業所

https://mam-storelocator.com/detail/778/

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