5 月に学生の皆さんで植えた苗が酷暑を乗り越えて、無事に元気に大きく育ちました。
稲丈が伸びすぎないよう追肥をせずに育てた強力の収量は少なめですが、それでも稲丈はグングンと成長し、大きな稲では稲穂をまっすぐ伸ばすと山口先生の顎の高さに迫る140cmを超える高さになりました。大型の台風や雀の集中攻撃に気をもみましたが、倒れるものもほとんど無く収穫を迎えることができて一安心です。
強力米の大きな特徴の1つが稲丈の大きさです。横に寝かせた上の稲が標準的と言われている「日本晴れ」、下が「強力」。大きいものでは 140cmを超える大きさです。また、それぞれの籾を比較すると日本晴れと比べて粒も大きいのがわかります。
写真は右が「日本晴れ」左が「強力」。「強力」の力強さが伝わってきます。
強力は通常の稲と比べて稲高が高く、自脱型のコンバインでの刈取が難しい場合があるため、今回の刈取にはソバや大豆なども刈取できる小型汎用コンバイン VCH750 を使用しました。
汎用コンバインの中では小型とはいえ、75 馬力を超えるコンバインは学生さんにとってインパクトが大きかったようです。
後日、大学で栽培しているソバや大豆の刈取も VCH750 を使って行う予定です。
この日は天候にも恵まれ、午後から刈取り作業を行いました。
刈取実習を行ったのは紙マルチ田植機で田植えを行った15 人の学生の皆さんです。初めてコンバインに乗る学生さんからは「思ってたより大きい!」「中身はどうなってるの?」といった声も。
真剣な面持ちで刈取り作業を行う学生の皆さん。体験する事で初めてわかる事、感じる事が沢山あったのでは、、、
種を蒔いた一粒一粒からこんなに沢山の量のお米が生まれました。
今回の収穫量はおよそ1トン。来年の秋にはこのお米から約 3000 リットルの日本酒ができあがる予定です。
学生さんたちは自分たちで刈取った採れたての籾に興味津々。どんな味のお酒ができるのか期待に胸を膨らませながら、収穫の喜びに目を輝かせて強力米の籾を観察していました。関わった大人たちも収穫出来て一安心。貴重な1日になりました。
山内 信太(やまうち しんた)さん
福井 瑛士(ふくい あきと)さん
新村 瑠里(しんむら るり)さん
コンバインで収穫した籾はすぐに乾燥機へ運び、乾燥させます。収穫したばかりのお米は水分量が多く(23%前後)そのまま放置するとカビや微生物が発生したり、発酵して籾が熱くなって「ヤケ米」などの品質の低下につながったりして、最後にはお米が腐ってしまいます。
そのため収穫したお米はすぐに乾燥機に搬送し、15%前後まで乾燥させます。急激に乾燥させると割れや砕米が発生して、品質の低下に繋がるので 10時間くらいかけて断続的に温風をあてながら乾燥させます。
乾燥させた籾から籾殻を取り除く作業です。籾摺り作業もお米の品質を左右するので慎重に行います。
お米をできるだけ傷つけずに籾を外せるようにお米の状態を確認しながら割れなどに注意して調整を行います。
籾殻を外すと一般によく知られている玄米という状態になります。
玄米の状態のお米はぬかといわれる層に包まれています。このぬかを除去していく作業を精米といい、玄米から8~9割程度精米された白いお米のことを一般的に白米と呼んでいます。
今回はお酒に使うため、さらにお米に磨きをかけて小さくしていきます。収穫した強力はお米の状態にもよりますが5割程度を目標に精米する予定です。お酒はより磨きをかけて小さくしたものが雑味が少なく高級と言われ、7 割以下を本醸造酒、6 割以下を吟醸酒・特別本醸造酒・純米吟醸酒・特別純米酒、5割以下を大吟醸酒・純米大吟醸酒として分類されています。
SPECIAL INTERVIEW
(有)山根酒造場 代表取締役社長
山根正紀さん
食べるお米は玄米から 9割程度精米した状態で食べますが、お酒は 7割~5割。
大吟醸ともなると4割~3割まで削った芯を使います。
小さく削られたお米できたお酒はその分貴重で美味しいお酒に生まれ変わります。
また、お酒造りではお米の性質や品質が味に大きく影響します。
お酒を醸造する際、お米が発酵して溶けて液体になった部分がお酒になり、残った部分が酒カスになるのですが、溶けていく時に球体のまま溶けた方が雑味がなく美味しいお酒が出来あがるので、お酒に使うお米は割れのないものを使います。お米は割れたところがあるとそこから先に溶けようとする性質があるのですが、割れたところから溶けてしまうと雑味が出てきてしまいます。
そのためお酒に使うお米は乾燥も精米も割れないように丁寧に扱うことが大切です。